職場環境の維持改善に使われる5Sですが、企業グループ等によってバリエーションがあります。
また、5Sを基本にしつつ、いくつかの要素を追加して展開しているのです。
確かに、5Sの本質は実践にあり、理屈をこねまわすことにそれほど重要ではないかもしれません。
所詮言葉と思ってしまえばどうでもいいことかもしれません。
しかし、5Sのバリエーションを確認しておくことで、逆に5Sの広がりや意味について一歩進んだ理解ができるようになります。
5Sのバリエーション
6S
5Sに「作法:Sahou」を加えて「6S」とします。
日本電産グループで使われています。
7S
東芝グループでは5Sに「しっかり:Shikkari」「しつこく:Shitsukoku」を追加して「7S」とします。
このほかにもいろいろな業界でそれぞれの「7S」が使われています。
以下はその例です
- 食品製造業界:5S+「洗浄:Senjou」「殺菌:Sakkin」
- 物流業界:5S+「安全:Safety」「安心:Smile」
- 5S+「作法:Sahou」「安全:Safety」
- 5S+「省エネ:Shoene」「サービス:Service」
- 5S+「節約:Setsuyaku」「創意工夫:Soikufu」
10S
アミューズメント施設運営のセガエンタテイメントでは、5Sに「習慣:Shukan」「しつこく:Shitsukoku」「しっかり:Shikkari」「信頼:Shinrai」「スパイラルアップ:Spiral up」を加えて「10S」とします。
基本は3S「整理」「整頓」及び「清掃」
5Sの基本となるのは、製造現場の安全や品質向上を目的とする3S(「整理」「整頓」及び「清掃」)です。
3Sは、各職場で徹底するべき事項を「整理」「整頓」及び「清掃」の3つにまとめたものです。
(1)整理(せいり:Seiri)
要不要を峻別し、不要なものを排除することです。
必要なものと不必要なものと区分し、不必要なものをなくす層別管理がその本質です。
そのため、ポイントとなるのは層別管理と発生源対策です。
層別管理
「整理」では、必要度や重要度等に応じて層別区分をします。
パレート図やKJ法等を用いて、重点や要点を「見える化」して重点管理します。
発生源対策
チリ、ほこり、ゴミ、汚れ等、不要なものを発生させている源を断つことです。
発生源を断つことで、できるだけ少ない労力できれいな状態を維持できるようにします。
(2)整頓(せいとん:Seiton)
要るものを適切に配置することです。
使いやすいようにきちんと置き、誰でもわかるように明確に表示し、必要なものをいつでも取り出せるようにしておきます。
「整頓」では、能率を向上するようにルールを定めて、それを適用していきます。
機能的な保管・配置を徹底し、紛失や捜索を排除して能率と品質の向上につなげることがポイントです。
例えば使用頻度を基準に保管・配置をすることが考えられます。
保管・配置の例
使用頻度に応じた保管・配置の例を考えます。
日常の作業から使用頻度を調査・分析し、それに応じて「使うもの」「ほとんど使わないもの」「使わないもの」に分類します。
必要であれば、「使うもの」を「頻繁に使うもの」と「ある程度使うもの」に、「使わないもの」について、「万一に備えて保管するが使わないもの」と「まったく使わないもの」に分類します。
以上の分類ごとに、それぞれの保管場所を決めます。
3分類
- 使うもの 作業域内
- ほとんど使わないもの 職場外または作業域から離れたところ
- 使わないもの 廃棄(倉庫で廃棄待ち)
5分類
- 頻繁に使うもの 作業域内または身につける
- ある程度使うもの 職場内で作業域近くに置く
- ほとんど使わないもの 職場外または作業域から離れたところにおく
- 保管するもの 倉庫または保管室
- まったく使わないもの 廃棄
現場の事情は千差万別で、単純に決めることはできません。
それぞれの職場の機能性を重視したルールに従って保管・配置することが基本になります。
(3)清掃(せいそう:Seisou)
「清掃」は常に掃除をして、職場を清潔に保ち、細部まで点検することです。
清掃点検により不具合や欠陥を排除することが「清掃」のポイントになります。
清掃では、特にきれいにしておく清掃重点個所を明確にすることが重要です。
清掃は品質や安全の確保にとどまらず、従事者の意欲にまで影響を与えるので、職場環境の改善において重点的に取り組む必要があります。