5S活動が導入できている職場とは、5Sが当然のこととして定着している職場です。

短期的に5Sができたとしても、5Sが導入できたことにはなりません。
また、理屈として「わかった」だけではなく、作業手順等の作業者一人ひとりの行動が確実に行われるようになって5S活動が導入できたことになります。

作業者一人ひとりが、5Sができていないと不自然に感じる、居心地が悪い、落ち着かない、となるのが目指すべき5Sが導入できている状態です。

5S活動では継続的な維持活動が不可欠

職場の改善は短期間だけ行えば済むものではありません。
もちろん、やらないよりはやったほうがずっとましですが、改善が効果を出すためには継続的な維持活動がなくてはなりません。

5Sについても継続的な維持活動が不可欠です。
5Sの継続的な維持活動は、突き詰めれば作業員一人ひとりの継続的な維持活動に依存するものですから、作業者一人ひとりが5Sを習慣化できていることが極めて重要になります。

したがって、5S活動を導入するには、従事者一人ひとりにとって5Sが当然のこととして習慣となっていることが欠かせません。

5S活動は全社運動としていく

5Sが従事者一人ひとりの習慣として定着するためには、全社運動として盛り上げていくことが重要です。

人間は習慣を変えられない、周囲に流されてしまう傾向がある生き物です。
習慣を変えようとしていても、なかなか変えられないほうが普通、よほど意思を強くしなければ変えられません。
また、一人ひとりが意志を強くしても、周囲が変わらなければ元の習慣に戻ってしまうことも多いでしょう。

5Sを定着するためには、従事者一人ひとりの取り組みとするだけでなく、5S活動を全社運動としていくことが重要になるのです。

5S活動では全員参加と率先垂範が大切

5S活動を全社運動とする際には、作業者一人ひとりがそれぞれ責任をもって参加するように「全員参加」すること、管理監督者やリーダーが部下や他の作業者の模範となるように行動する「率先垂範」すること、この2つが特に大切です。

「全員参加」と「率先垂範」を進めることが、作業者の参加を促し、5Sを全社運動としていくことにつながっていくのです。

5S活動の定着を妨げるもの

5S活動の定着のためには、全社運動としていくことが重要です。
しかし、それを妨げるものがいくつかあります。

1 作業者の抵抗感

5S活動が定着すれば作業の効率化や品質の向上につながるとされます。
しかし、その程度を事前に知ることはできません。

5Sの効果は必ずしも数値化しきれるものではなく、効果の程度はやってみなければわからないところがあります。

効果がわからないもののために今までのやり方を捨てさせられる、従業員がそう考えてしまうと積極的な参加を望めなくなります。

特に従事者一人ひとりが自信とこだわりを持っている場合にはその傾向が強くなります。

仕事は高級なもので、高度なものでなければ仕事とはいえない、そんな思いもあるのでしょう。
反対に5Sの行動一つひとつはとても簡単なものが多く、低級なものに感じられることすらあります。

高級なものに低級なものを持ち込むものに抵抗を感じる作業者もいることでしょう。
その抵抗感が本気で取り組むことを妨げてしまいます。

2 「雑用」の増加感

5S活動自体は必ずしも付加価値を生むものではありません。
付加価値を生まない、一見雑用のように見える活動に時間を取られることに魅力を感じない作業員は少なくないでしょう。

それまで作業に充てていた時間を5Sに割かなければならないことを不愉快に思う作業者も出てくるかもしれません。

導入直後で効果が明確になっていない時点では、5Sへのインセンティブが乏しくなりがちです。

3 「スローガン」化

5S活動の実際の行動一つひとつは簡単なものが多く、その気になればいつでも5Sができる、そんな気になりがちです。
また、5Sは「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「躾」と簡潔な言葉にまとめられているので、行動一つひとつがわからなくても、何となくわかったような気にもなります。

言葉と行動の結びつきが弱くなると、5Sが具体的な行動に結びつかないことも出てきます。
「整理」「整頓」が必要だ、と思っても、具体的に何をすればいいのかがわからなくなってしまうのです。

「5S活動」、「整理」、「整頓」、「清潔」、「清掃」、「躾」と唱えるだけで実質的に何もしない、「口だけ5S活動」がとなってしまうことも少なからずあります。
言葉の上では5Sが飛び交い、5S標語が書かれたポスターが貼られていても、現場では具体的にはできていないなんて事態も発生しかねません。