「なぜなぜ分析」とは、問題発生の真の原因を明らかにするために、疑問を繰り返し掘り下げる手法です。

この手法では、問題が発生した背後にある本当の原因を見つけ出すため、「なぜ?」という疑問を繰り返し投げかけます。
具体的には、「なぜその問題が起きたのか」を5回程度問い返し、徹底的に追求します。

これにより、同じ問題が繰り返されないようにする改善策を見つけることが目的です。

なぜなぜ分析の目的

なぜなぜ分析は、さまざまな分野で活用されており、品質管理、生産管理、業務改善などに広く適用されています。
問題の本質を見極め、適切な対策を講じるために、この手法を活用することが重要です。

「なぜなぜ分析」は、問題の理解を深め、再発防止や効果的な対策の立案に役立ちます。
一つの問題に対して何度も「なぜ」と問いかけることで、表面的な原因ではなく、その下に潜む真の原因を明確にしようとするのが特徴です。

この手法は、疑問を持ち続け、深く掘り下げることによって問題解決の視野を広げる効果があります。

なぜなぜ分析と人為的ミス

「なぜなぜ分析」は、特に人為的ミスに対して効果的な手法です。

なぜなぜ分析は、個人の責任を追及するのではなく、システムの中に存在する真の原因にアプローチすることを重視します。
個人の責任追及はなぜなぜ分析の目指すところではありません。

言い換えると、「なぜ問題が生じたのか」を繰り返し問いかけることで、個々の人の行動ではなく、システム内部にある真の原因に焦点を当て、再発を防ぐ取り組みを行います。この方法によって、より具体的な問題解決と改善が可能となります。

なぜなぜ分析によって、システムやプロセスの改善に焦点を当てるため、持続的な改善を実現することが可能になります。

「なぜなぜ分析」は問題解決に有効

なぜなぜ分析は様々な「問題」に適用可能です。

このうち、「既に生じてしまった問題」に対して、「なぜなぜ分析」がその解決に役立ちます。

なぜなぜ分析が有効な「問題」

この問題について、「今後生じるかもしれない問題」と「既に生じてしまった問題」に分けられます。

「今後生じるかもしれない問題」は、将来の問題のことです。
このような問題に対しては、どのような問題が発生する可能性があるのかを予想し、事前に対策を準備することが重要です。

「既に生じてしまった問題」は、過去や現在における問題のことです。
この種の問題に対しては、なぜ問題が発生したのかという真の原因を明確にし、同様の問題を将来再発させないようにすることが重要です。

「なぜなぜ分析」では、「既に生じてしまった問題」に対して何度も「なぜ」と問いかけます。
どのような問題が発生するのかを予想するのではなく、「既に生じてしまった問題」の表面的な原因ではなく、その下に潜む真の原因を明確にしようとするものです。

「なぜなぜ分析」は再発防止のために非常に効果的な手法です。

なぜなぜ分析のやり方

なぜなぜ分析の導入には、以下の4つの段階を経ることが効果的です。

  1. ガイダンス(導入の意義を認識する)
    なぜなぜ分析の意味と目的を理解するためのガイダンスを行います。
  2. ラウンド1(分析対象領域の設定)
    分析の対象となる領域を明確にし、現状の把握や改善の目標設定を行います。
  3. ラウンド2(なぜなぜ分析の実行)
    なぜなぜ分析を3つのステップで実施します。問題の真の原因を追求し、それに基づいた改善策を考えます。
  4. ラウンド3(改善案の実施)
    改善案を現実の問題に導入し、実際に改善の成果を実現するための重要なステップです。このサイクルを繰り返すことで持続的な改善が可能となります。

ガイダンス(導入の意義を認識する)

なぜなぜ分析の最初のステップは、「ガイダンス」です。
このステップでは、なぜなぜ分析について正しい理解を得ることを目指します。

「ガイダンス」には以下の3つの内容が含まれます。

「なぜなぜ分析」の目的の理解

実施者が真の原因を追究する重要性やチームワークについて理解することが重要です。

フレームワークに関する共通見解

共有すべきポイントとして、自身のノウハウを最大限に活用することや、勘や経験に頼らず論理的思考に移行することがあります。
また、「現場、現物、現実」の「三現主義」に基づいて実行優先の指向を推進することで、否定的な影響を弱めることが重要です。

「なぜなぜ分析」のフレームワークの理解

「なぜなぜ分析」のフレームワークは、「施策の具体化」と「下方展開の重要性」の2つの要点に集約されます。
施策の具体化に関しては問題ありませんが、「下方展開の重要性」は理解しづらい場合があります。

欧米の経営手法では、問題の本質的な改善を重視し、上位の問題に対する改善を行うことが重要視されます。
一方、多くの日本企業は「ボトムアップ」を重視しています。
全ての改善テーマを上方展開することは経営成果につながらないため、「下方展開」が重要な要素となります。

ラウンド1(分析対象領域の設定)

なぜなぜ分析の第2段階は、「ラウンド1」と呼ばれます。
この段階では、自身のノウハウを最大限に活用するだけでなく、関係者(協力工場や材料調達先など)のノウハウを引き出すことも重要です。
関係者の意見が一致した後に、「ラウンド2」の実行段階に移行します。

「ラウンド1」には、以下の3つのステップが含まれます。

分析対象領域の設定

分析の対象となる領域を明確にすることが重要です。過度に領域を絞り込むことも避ける必要がありますが、無限に領域を広げてしまうと分析が困難になります。重要なのは、部分的な最適化に陥らないようにすることや、チームの力を活用して第一線のノウハウを集約することです。

現状把握

明確になった分析対象領域について、現在の状況を正確に理解するためのデータ収集、処理、分析を行います。このステップにより、問題を定量的に把握することができます。勘や経験に頼る傾向はこのステップで排除されます。

改善ターゲットの設定

改善の目標を定量的に把握するためには、「尺度と数値目標」と「時間」の設定が重要です。これにより、改善に集中すべきポイントを明確にすることができます。改善目標は必ず尺度と数値目標とセットで設定される必要があり、時間についても明確に設定されるべきです。このステップでは、曖昧な改善目標を排除することが重要です。

ラウンド2(なぜなぜ分析の実行)

第3段階である「ラウンド2」では、「なぜなぜ分析」の展開を3つのステップで実施します。
なぜなぜ分析のフレームワークは明確で分かりやすいですが、実際の導入にはいくつかの困難があります。
その中でも特に重要なのが「具体的な実行手順」に関する困難です。

以下の3つのステップに分けて具体的に考えていきます。

論理重視の仮説設定ステップ

仮説の設定が論理に基づいて行われているかを重視します。

定量的検証重視の仮説検証ステップ

仮説の検証が定性的ではなく、定量的に行われているかを重視します。

改善の重点化ステップ

改善を重点的に行うべき箇所が明確にされているかを重視します。

これらのステップを着実に進めることが重要です。
一気に結論を出すのではなく、ステップバイステップで丁寧になぜなぜ分析に取り組んでください。

ラウンド3(改善案の実施)

最後の第4段階である「ラウンド3」は改善案を現場に導入することです。

つまり、改善の結果を実現するために重要で不可欠な段階です。この段階では、改善案が実際に現場で実施され、成果を上げることが目指されます。

結果を獲得できない多数の「なぜなぜ分析」では、多くの場合「ラウンド3」を省略していることに注意を払ってください。